形勢判断の基本 – 駒割りについて【初心者向け将棋講座】

さて、形勢判断の基本ということで、まず最初のテーマは「駒割り」です。

駒割りとは、駒の損得勘定を指します。これは、将棋の形勢判断における大きな要素です。

例えばですけど、相手の飛車と角をタダでゲットできれば、もう絶対に負けない!って思いますよね。

例のように、駒得をすればそれだけ局面は有利だということが言えると思いますが、初心者のうちですとこの辺りの判断基準があいまいです。

例えば、【金・銀・桂・歩】と【飛車・香・歩・歩・歩】の交換だったとしたらどうでしょう。

「飛車をもらったほうが有利だと思うけど、金銀もってかれるとなぁ、う~ん…」

悩みますよね。

実戦の中終盤戦においてはこういった駒の交換は頻繁にあり、ここで自分が駒損する変化を選んでしまうと、たちまち不利になってしまうでしょう。

なので、駒の損得を判断するための明確な基準が必要になるんですね。その基準をもって、この変化は不利、この変化なら有利と判断しながら先を読んでいくということです。

さて、この明確な判断基準ですが正直なところ定義が難しいので、以前に谷川先生が出版された「将棋に勝つ考え方」という本にある、駒に点数をつけるという考え方を引用させていただきます。

点数については以下の通りです。

  • 17点:竜
  • 15点:飛
  • 15点:馬
  • 13点:角
  • 12点:と金
  • 10点:成香
  • 9点:金
  • 9点:成銀
  • 8点:銀
  • 6点:桂
  • 5点:香
  • 1点:歩

オレンジ色の部分は、成り駒の目印です。

この点数の使い方はいたってシンプルで、盤面と持ち駒をトータルして、相手と自分のどっちの方が点数が多いかを計算します。

そして当然、点数が多い方が有利というわけです。

ですので、先ほどの【金・銀・桂・歩】と【飛車・香・歩・歩・歩】はどちらが有利かという問には、【9 + 8 + 6 + 1】と【15 + 5 + 1 + 1 + 1】のどちらが大きいかを考えれば解を導き出すことができます。

つまり、【24】と【23】を比べれば良いので、【金・銀・桂・歩】を取った方が1点リードできるということになります。

そして、この点数を稼ぐためには、相手の駒をタダで召し取ってしまうのが早いんですが、実戦ではなかなかそうもいきません。

ですので、実戦においては点数の低い駒と点数の高い駒の交換を狙ったり、成り駒を作るというのが基本となります。

いくつか点数稼ぎの具体例を紹介しておきましょう。

駒得を狙う手筋

これは、ふんどしの桂という手筋で、相手は何をしても飛か角のどちらかを桂馬と交換することになります。

これが決まれば、7点から9点有利になりますので、実質銀か金をタダでとったのと同じ駒割りになるということです。

こちらは田楽刺しという手筋ですね。

角が逃げれば飛車が取れるし、何もしなければ角が取れますので、こちらは7点から10点有利になります。

成り駒を作る

また、成り駒を作るというのも点数を稼ぐうえでは重要なポイントになります。

相手の陣地に駒を進めて成るというのは、実戦でもよく現れますよね。

そしてそれを具体的に点数で考えると、飛車を竜にできれば2点有利ということになります。歩二枚分ですね。

ですので、なにも相手の駒を取るだけが駒得ではありません。この例ですと、「竜得」みたいな言い方をされる方もいらっしゃいます。

さらに、この成り駒で注目したいのが、と金の点数が12点というところですね。

よく見ると、と金の点数が角に匹敵するほど高くつけられていることがわかるかと思います。と金が何故こんなに価値が高いかというのは、極端ですが次の図を見てください。

もしあなたが先手だとしたら、この局面を見て勝てそうですか?

筆者が先手なら、迷わず初手で投了します。

ソフトの検討結果も-6262点で後手勝勢と諦めモード。ちなみに、初手の候補手は▲6六歩のようです。(どうせ何指しても負けんだろみたいな手)

これは、と金が金と同じ動きができるうえに、取られてもただの歩という最強の特性があるためです。

プロの将棋などでも、よく歩をポンとおいて次の歩成りを狙う手がよく出てくるように、と金を作るということはそれだけ局面を有利にしやすいということなんですね。

「と金の遅早」という格言もある通り、遅いように見えてもと金を作って相手の駒にスリスリと寄っていくだけで十分破壊力のある攻めになりますので、
初心者の方はチャンスあらばと金を作るということを覚えておくと良いでしょう。

簡易的な駒割り

ここまでで駒割りの点数計算と、点数を稼ぐためのポイントについてご説明いたしました。

しかし、実戦においては時間などの都合で、正確な点数計算をしている余裕がない場合があります。

ですので、ここからはより実用的な駒割りの判断方法について説明します。

点数で考えない

まずは、点数の概念の捨てます。笑

点数はじっくり局面を見たい時には有効ですが、時間がかかるので実戦においてはあまり効率的ではありません。

なので、実戦でよくあるケースをもとに、パターンとして覚えておくのが良いでしょう。

以下にいくつか駒得のパターンを紹介します。

駒をタダで取ったパターン

これは言うまでもないかもしれませんが、駒をタダで取った方が有利ですね。

弱い駒と強い駒を交換したパターン

駒が強いか弱いかは、先ほどの駒の点数から順に考えれば問題ありません。

純粋に1:1の交換になった場合、強い駒を手に入れた方が有利なのは間違いありません。

成り駒を作ったパターン

成れば駒が強化されるので、駒が強くなった分だけ有利になります。

たとえば、歩がと金になれば大出世です。金を一枚をタダで取ったのと同等ですからね。

二枚換えをしたパターン

二枚換えというのは、強い駒1枚と、弱い駒2枚を交換することをいいます。

「二枚換えは、歩とでもせよ。」という格言もある通り、一般的には、
2枚手にした方が有利といわれていますが、ここの判断は少し難しいので、具体的な例で覚えるのが良いかと思います。

  • 飛 < 金 + 銀
  • 飛 = 金 + 香
  • 飛 > 桂 + 香
  • 金 < 桂 + 香
  • 金 > 桂 + 歩
  • 桂 > 歩 + 歩

だいたいこんなところでしょうか。

このリストでは、飛 = 角、金 = 銀、桂 = 香で考えても同じです。

ポイントは、金銀の二枚換えは、金銀をもらうほうが有利という点ですね。

ただし実戦においては、大駒を自陣に打たれる等して駒損をすぐに回復されてしまうという展開もあるので、過信は禁物です。

これらはあくまでも、形勢判断の一つの目安として覚えてください。

歩の損得について

プロの将棋をみると、歩をどんどん捨てていく手がよく指されているかと思います。

特に一昔前の角換わり腰掛銀の定石なんかは顕著で、先手の仕掛けで1筋、2筋、3筋、4筋、7筋の歩を全部捨てていく順があります。

これは瞬間的に4歩損ですから、二枚換えどころでは済まない騒ぎです。

しかしながら、歩の場合は、中盤以降においては形勢判断に含まないという考え方が一般的です。

これはなぜかというと、二歩というルールがあるためですね。

仕掛けのタイミングでは、ほとんど歩が残っている状態なので、歩を取られても使われる心配がないということです。

よく「一歩渡せばあとは何枚渡しても同じ」という解説を耳にしますが、意味としてはこれと同じはずです。

例えば、上図の仕掛けの例(かなり古いが)ですと、歩を4枚も渡していますが、後手は歩を打てる筋がどこにもありませんよね。

また、歩を捨てることで相手の陣形をほぐしていくと同時に、歩を持った時の使い道を増やすことにもなります。

先手はこの後に▲4五桂や▲2四飛などで1歩を取り返せる変化があるので、その一歩を使って▲7四歩などを狙えば、攻めを継続することができそうです。

なので、角換わり腰掛銀では仕掛けで何枚も歩を捨てても互角だといえるんですね。(厳密にいえば図の変化は後手が良い)

歩切れについて

「一歩渡せば何枚渡しても」ということですが、「一歩渡さなければ違うのか」という疑問は当然あるかと思います。

これには、「歩のない将棋は負け将棋」という格言がぴったりの説明ですね。
持ち駒に歩がない状態を「歩切れ」といい、中盤以降において歩切れになると、不利になるケースが多いです。

先ほどの歩の損得の話では、5歩損しても互角と説明しましたが、これはあくまでも一歩以上手持ちにできる算段がある場合に限ります。

もし一歩も取り返せず純粋な歩損になってしまうと、単純な駒の損得以上に形勢が開きます。

さて、なぜ歩切れだと不利なのかということですが、次の図で2つほど例をご紹介しましょう。

この図では、後手が△5二香とした局面です。

ここで、先手に一歩あれば▲5四歩と打って簡単に受けることができますが、持ち駒がなにもなければ玉を逃げるよりなく、飛車を取られてしまいます。

これは実戦においてもよくある展開で、間駒に歩がないので受けづらいという例になります。

この図では、後手玉をもう少しというところまで追い込んだ局面です。

ここで、先手に一歩でもあれば、▲1二歩と打って詰みなのですが、持ち駒が何もなければこれ以上迫る手がありません。

こういった局面も実戦ではよく現れます。

つまり、見ていただいたように歩切れだと「攻め」にも「受け」にも融通が利きません。

なので、持ち駒に常に歩を置いておくというのは、損得以上に重要なことであるということになります。

しかし、もちろん一歩使ってうまくいく局面なら迷わず使うことも大切です。

「最後の歩を打ちましたが、これでどうか」といったような解説はよく耳にしますが、これは「歩切れになるけど、これで攻め繋げるか」というニュアンスなんですね。

駒割りのポイントまとめ

ここまでで色々とご説明しましたが、少し長くなってしまったのでポイントをまとめます。

  1. 駒割りは駒に点数をつけると簡単に判断ができる
  2. 実戦においては、パターンで覚えておくと時間効率が良い
  3. 中盤の歩損は形勢判断に含まない
  4. ただし、純粋な歩切れは歩損以上に形勢が開く

これらすべてをいっぺんに考えるのは、初心者のうちだと難しいかもしれません。

しかし、普段から意識をするだけでもずいぶんと対局観が変わってくるはずですので、ぜひ身に付けていただきたいですね。

それでは、駒割りの基本に関する内容は以上となります。

次回は、駒の働きについての講座になります。

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